トレッキングへ行こう
リヴォルノには「トレッキングクラブ」という山歩き好きの同好会がありました。
ある秋晴れの日曜日、私も飛び入りでこのトレッキングクラブに参加し、山歩きをすることになりました。
買ったばかりのトレッキングシューズを履き、リュックサックを背負い、はりきって集合場所に着くと、もうすでに30人は超える大勢の山好きが朝早くから集まっていました。
出欠をとり、それぞれ車に分乗し、山歩きのスタート地点へと向かいます。
車で行くことおよそ30分、ピサの山あいにあるオリーブ畑に囲まれた小さな村モンテマーニョから、私たちは歩き始めました。
山道を歩いていると、かわいい花が咲いていたり、赤いちっちゃな木の実を見つけたりと、飽きることがありません。
道ばたには栗も転がっていました。
目を輝かせながらテクテクと歩いていると、
「この実は食べることができるのよ」
と、なんとなしに会話が始まります。
自然の中にいると、みんなすぐに仲良しになれるから不思議です。
下は子供から、上は70代のおばあちゃんまで、そしてひとり飛び入り参加の日本人の私も…。山道を歩きながらあちこちで話が弾んでいました。
歩きながらいろんな人に質問を受けました。
「イタリアに来てどれくらいなの?」
「3ヶ月よ」
そう答えるとみんながみんな
「えっ?たったの3ヶ月なの?あなたのイタリア語は素晴らしいわ。ブラーヴァ!」
と、おだててくれました。
あまりにも何度も言われるので、私はすっかり嬉しくなりました(調子に乗りやすい…(^^;. )。
ふもとを見下ろすと、いつのまにかかなり登っていて、さっきの村が下のほうに小さく見えていました。
はるか向こうを見渡すと、平野の中にアルノ川やピサの斜塔も見えました。
「リヴォルノはどこなの?」
私がそう尋ねると、
「ちょうど山の陰のところにリヴォルノがあるからここからは見えないけど、ロッカからはよく見えるよ」
ロッカとは、正式の名称をフォルテッツァピサーナといい、私たちが目指している山の頂上にある城塞跡のことです。
「よ〜し、もうひとふんばり」
くねくねした山道をふたたび気合いを入れて登り始めました。
進行方向には、ロッカのあるとんがった山が見えていました。

登り始めた頃はまだ寒く感じていたのが、歩いているうちにだんだん汗ばんできて、いつの間にか1枚、また1枚、と服を脱いでいきました。
「山歩きに出かけるときは、チポッラ(玉葱)のように重ね着をしておけ」
と前もって言われていた意味がやっとわかりました。
ロッカに近づくにつれ、だんだんと道が細く、急になってきました。
やがてその道もなくなり、木と木のあい間を枝に捕まりながら登らなくてはならなくなっていました。
「あともう少し、頑張れ!」
「滑らないように気をつけて!」
かけ声をかけ合い、おばあちゃんには手を差し伸べ、最後の難関を助けあいながら登っていきました。
ようやく頂上のロッカにたどり着いたのは、もうお昼を過ぎたころ、歩き始めてから、すでに4時間近くがたっていました。
しばらくのあいだ私たちは眼下に広がるパノラマを満喫し、それから、およそ千年前に建てられたという古い城塞跡を見学しました。
さて、お楽しみのお弁当の時間…、ロッカのお気に入りの場所に腰掛け、それぞれ持ってきたパニーノを頬張りました。
青空の下で食べるパニーノの、それはそれはおいしいこと!
あちらこちらからサラミやプロシュット、ペコリーノチーズなどのお裾分けがまわってきたりして、和気あいあいとしたお昼となりました。
会話も弾み、あちこちで盛り上がっていましたが、食べ終わると休憩もそこそこに、私たちはまた来た道を下り始めました。
秋の日はつるべ落とし…早めに山を下り始めなければ、明るいうちに下山できないからです。
夕方、ふもとの村にふたたび戻ってきた時は、もう一歩も歩けないほど足が痛くなっていました。
(実際、足の親指の爪が内出血で紫色になっていました。下り道で足の親指に負担がかかっていたのでしょう)
「ああ、もう山歩きはしばらくごめんだ…」
と、一瞬足を引きずりながら思いましたが、自然を楽しみ、仲間と一緒に充実した1日を過ごせたことは、これからもずっと心の中に爽やかな秋の日の思い出として残っていくことでしょう。
「また一緒に山歩きをしようね」
何人かにそう言われ、少し躊躇しながらも
「また歩こうね」
と、私は返事をしていました。
山に風が吹きはじめました。
私たちは刻一刻と変化しながら夕焼けに染まる山の景色を見納めると、おいしいポルチーニ料理を食べに山小屋レストランへと車を走らせました。(01/09/04)
©2003-2005 Caccolina. All Rights Reserved.